初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~



 翌日は一緒にお弁当を食べて、また企画の指導を受けた。彼はお弁当を喜んでくれた。
 そうして企画書はなんとか形になった。
 企画書はいくつか出した。

 VRゴーグルを使うもの、そもそも、三角形のお風呂にするもの、まんまるにしてみるもの。アロマキャンドルを浮かべるもの。
 企画として通りそうにはないな、と自分でも思った。だが、まずは出してみることだよ、と蓬星に言われて出してみた。

 企画会議というものに初めて参加した。
 それぞれの意見にそれぞれの考えてをぶつけあう。いいところ悪いところ、ブラッシュアップできるところ。遠慮なく話をしていく過程が面白かった。ほぼ外野のように見ていることしか出きなかったが、企画の熱は伝わった。

 アロマキャンドルは速攻で却下された。浴槽のアイディアではないからだ。
「でも、ショールームのお客さんに来場プレゼントで渡すのはいいかもしれませんね」
 蓬星が言う。
「いいねえ。ショールームの人に提案してみるよ」
 佐野が言った。
 企画が通ったわけではないが、認められて嬉しくなった。

「VRゴーグルを使うのも面白いけど、うちでやることじゃないんだよな」
 佐野がうなる。がっかりした。
「ショートケーキみたいなお風呂っていうのもね、かわいいけど、今は現実的じゃないなあ」
 ダメ出しもきっちりされて、へこむ。

 瑚桃はゴージャスでラグジュアリーなお風呂、とだけ書いていて、それをダメ出しされていた。
「じゃあ、また次回までにいい案を出してね」
 次回、と初美は顔をひきつらせた。またなにか考えないといけないのか。そんなにアイディアが出てくるとは思えない。

 佐野が立ち上がった直後、頭を抑えた。
「大丈夫ですか?」
「ひょっと、頭痛がね」
 蓬星は顔をしかめる。
< 95 / 176 >

この作品をシェア

pagetop