婚約破棄されたので悪女を演じることにしました~濡れ衣を着せられた聖女ですが、すべて捨てて自由になるのでお構いなく~
「ふん……随分あっさりじゃないか。やはり貴様はコールマンの名に縋っていただけだったのだな、この能無し女め」

「…………」

 反論したところで何も変わらない。だって彼は、この国の現状を知らないのだ。

 私が黙ったまま見据えていると、ライアンの腕にしがみついていたナタリーがキッと睨みつけてきた。

「……もう我慢なりません。エマリネ様、あなたには失望しました!」

「といいますと?」

「聖女の使命を与えられたのであれば、最後まで役目を全うするべきではありませんか? あなたがその使命を放棄した今、私が聖女として皆さまを癒しますわ!」

 ……はい?

 意気揚々と、会場にいるすべての人に向けて高々と宣言する。その表情は覚悟を決めたようにきりっとしていて、どこか頼もしさを感じた。

 彼女は今、なんと言った?

 私がきょとんとした顔をしたからか、ナタリーはふふんと鼻を鳴らし、自慢げに胸を張る。

「何を言っているかわからない、といった顔をされていますね、エマリネ様。あなただけが特別な存在だとお思いなんて、自惚れるのもそこまでにしていただけます? 私には、聖女の資格があると申し上げているのです!」

「……ははっ、そうだ! これは先日神殿で正式に認められたのだ!」

 これが証拠だ、と神殿で受けた鑑定結果が掲げられる。そこには確かに、高ランクの治癒能力を兼ね備えていることが書かれていた。しかし、桁外れの数値は私も今まで見たことがない。

「間違いなくこれは正式な鑑定結果だ。あの不動な神官もたいそう驚いていたが、この結果に偽りはない。――つまり、ナタリーは聖女の座に近しい人間であることが証明されたのだ!」
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