婚約破棄されたので悪女を演じることにしました~濡れ衣を着せられた聖女ですが、すべて捨てて自由になるのでお構いなく~

 ライアンのいう通り、忠実である神官の判断は簡単には揺るがない。たとえ王族直々の依頼でも偽装することはないだろう。確か以前の記録では、ナタリーには基礎程度の魔力が備わっている程度だったはずだ。ルイズ家とコールマン家との家系を見ても、親戚にあたる関係でもない。

 ということは、急に能力が開花した? コールマン家が代々受け継がれてきた、聖女の治癒能力を?

 仮にコールマン家の人間が不貞行為を働いたとしても、能力自身が人を選ぶと代々引き継がれてきた聖女の能力がそういった不届き者に宿ることは今まで聞いたことがない。

「私なら、エマリネ様よりも多くの国民と真摯に向き合い、心さえも癒すことができます! 戦場で多くの人を癒し、国に安寧をもたらすことだって可能です。私に聖女の能力が目覚めたことは、神様が与えてくださった使命なのです!」

「お、おい……あの令嬢が言っていることは本当なのか?」

「で、でもあの書面は本物だぞ……!?」

「じゃあ本当に、あの令嬢が本物の聖女だと? 神官が認めたってことか!?」

 突然の発表に会場内がいっそう騒がしくなる。神殿が証明したとなれば、半信半疑だった彼らもライアンの言葉に耳を貸すだろう。

「貴様らコールマン一家はもう、この国に必要ない! しかし、私もそこまで悪魔ではない。貴様さえ出ていけば、他の者は引き続きこの国の滞在を許そう。貴様は荷物をまとめ、早々にこの国から出ていけ! 二度と顔を見せるな!」

 一方的に罵るライアンの姿に、周囲の目が変わる。特に使用人はすっきりしたように満面の笑みを浮かべていた。

 ここに味方はいない。……いや、最初からひとりもいなかったんだ。

 期待するだけ無駄だったのに。

 最初から私自身を見てくれる人は――

「――ならば、私が彼女をいただいてもよろしいか?」

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