魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 ソフィーは優しくイーダを抱きしめた。

「そうねえ、娘が嫁に出すのはうれしいけど、確かに淋しくもあるわ。でも、イーダにはしあわせな結婚をしてほしいかな。私はそれが叶わなかったから」

「母さんは結婚したかった?」

「集落を出て、王宮にいく覚悟を決めるくらいにわね。だけど、サンディは私が魔女だって知ったら手のひらを返したの」

「後悔してる?」

「後悔? 何を?」

「国王陛下と恋をしたこと」

「それは後悔してない。イーダを授かれたから」

「なのに私が魔界に行ってしまってもいいの?」

「いつかイーダが結婚して集落を出ていくこともあるのかなって、半分覚悟はしてた。まさか相手が魔王様とは思わなかったけど! でも、とっても素敵な人じゃないの。魔王様以上に安心して娘をお願いできる人、少なくとも人間界では見つからないわよ」
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