魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

「だって、私が王女って!」

「王女より、魔王様の妃になるほうがすごいことだと思うけど?」

「あっ、それ……ね……」

 イーダの笑いは完全に引いてしまった。

「ところで魔王様は?」

 ソフィーはようやく魔王がいないことに気がついたようだった。

 ラーシュから手紙を受け取って以降、それどころではなかったのだろう。

「先に魔王城に帰ってもらった」

「そう。で、イーダは?」

「私……私は……」

「魔王様と結婚するんでしょ?」

「それなんだけど、魔王様に迎えをお願いしなかったら、私はこのまま集落にいられるんだって」

「ふうん。それで? いつ迎えをお願いするつもりなの?」

「へっ!? 『いつ』って、私の話きちんと聞いてた? 私、ずっとここにいられるんだよ?」

 全てを見透かしたようにソフィーが笑った。

「うん。で?」

「……すぐにでも魔王様のところに行きたい」

「なら、そうしなさいよ」

「だけど! ソフィー母さんやみんなと離れ離れになるんだよ?」
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