魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

「それと、この件はまだ内密にしておいてほしい。交渉が成立するかは不透明だから……」

 魔王に何かを願うと、魔王はそれに見合った対価を要求してくる。その対価さえ払えるならば、願い事は必ず叶えられる。

 しかし、対価は魔王の気まぐれで決まるともいわれている。

 魔王に一旦お願いしておいて、対価が惜しくて諦めたとなったら、王都民は許さないだろう。

(大魔女を呼び出した理由はここにもあったんだ……)

 ソフィーは苦笑いした。

(サンディにこういう小心なところがあるのは知っていたじゃない……)

「ラーシュ!」

 ラーシュはやりとりを聞いていたのだろう。どこかから飛んでくると、迷うことなく国王が手に持っていた親書をくちばしで挟んだ。

「このカラスは大魔女殿の使い魔なんだね?」

(今さら何を……でも、やはりサンディはラーシュのことを、手紙の配達をしてくれるカラスとしか認識してなかったということね)
< 28 / 227 >

この作品をシェア

pagetop