魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「『嘘をつけなくする薬を作れ』とか?」
ソフィーもそれに応えて苦笑いした。
「そうそう。『式典の日は雨が降らないようにしろ』とか……ああ、『3日間だけ仮死状態にしろ』ってのもあったわね。何のためかは教えてもらってないけど」
(そういう依頼をしてくる王族こそ胡散臭いのにな……)
そう思ったとき、イーダは不思議になった。
「だったらどうして今回はまともな薬の発注が来たんだろ? しかもこんなに大量に……」
ソフィーは肩をすくめた。
「前回流行ったときには王都の人口が半減したっていうから、」
『半減』という言葉にイーダはぎょっとしたが、ソフィーは続けた。
「その反省も踏まえて国王陛下も必死なんでしょうね。それに……まあ、今の国王陛下は魔女のことも多少は信用してくれてるのかもね。何せノールブルク領出身だから」
「えーっ、そうだったの?」
「前回斑紋死病が流行ったときに、王族もずいぶんと亡くなったのよ。それで傍系のノールブルク家から養子に出されたの」
「へえー、全然知らなかった」