幸せの欠片たち。
雲一つない空。
キンッと耳に響く鋭い音がするような青い空間。
その中で目にフラッシュを炊かれたかのような、自然光よりも機械的な色を持って、カラカラに乾いている…そんな太陽をもたらす空。

もしかしたら…今日は、厄日かもしれない。

最早凶器としか言えない強風にうんざりする。
冷たい風がさっきから着込んだロングコートの裾を、バサリと翻す。
直しても直しても、だ。
悴む程の寒さ。
心まで凍てつきそうで、溜息が白よりも少しだけ透けて、空気の色を吸い青く染まる。


一月末に、関東で雪が降るのはここ近年稀だと記憶している。

サクサクと、レインブーツで薄っすらと積もってから、半分水分を含み氷と化したアスファルトの雪の上を歩き進める。
そして、ふと目線を狭い路地へと流した。
はぁ、と何度目かの薄い息を吐きながら…。

まだ、誰も踏んでいないであろうその道には、キラキラとまるで銀粉が降り掛かったような幻想的な世界が広がっていて、大雪で何時も大変な苦労をしている方々には、とても心苦しいのだけれど…偶にこうして、視界を真っ白に染めてもらえるのもいいな、なんてことを思った。

気を抜いたら、どろりと燻んだ色に染まりそうな、この胸の内を浄化してくれるような気がするから…。

すぅー…。
ピンっと張りつめた空気を気怠げに、肺へと吸い込み肩を少し落とす。


まだ、水分が固まったままの雪の上に写る私の影はゆらゆらとゆれ、今にも消えてしまいそうだ。


そして、ぽろり、と溢れた言葉。


「もう、止めちゃおうかなぁ」
< 1 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop