幸せの欠片たち。
毎回、好きだと告白するのは凄く勇気がいる。
そして、それと同じくらい毎回、返ってくる言葉に笑ってしまうくらい不安になる。
本当に好きだと告白するのは凄く勇気がいる。
だからこそ…。
その答えが容易に想像が付いてしまうから。


「ごめん」

「困る」

「気持ちは嬉しいけどな」…。


その他…色々。
断られる言葉は毎回違うけれど、みんな意味は同じ。

捻じ切れそうになるのは、想いと直結している心。
でも、私はへらりと笑ってもう一度、「大好きだよ」と付け足すんだ。


大丈夫。
まだ、大丈夫。
だって…彼からはきっぱりとした否定の言葉は聞いていないから。
そう言い聞かせて、何時も自分をなんとか鼓舞する。

だから、毎年この時期になるとそわそわするのだ。
この時期、製菓会社の戦略に、毎年毎年飽きもせずにハマる女性は、私だけではきっとないはず。

だって誰に気兼ねなく、想い人に愛を伝えられるのだから。

モテる彼は、何時だって女子のターゲット。
一年から三年まで、誰もが大本命のチョコを用意して、告白の順番が来ることを、今か今かと虎視眈々と狙っている。
我先にとアタックして、即玉砕なんて子もいれば、時間を上手く利用して会話をしつつその流れでしれっと告白をして、そのまま撃沈してしまう子もいた。


でも…彼は、何時もどの告白にもOKをしなかったから、自惚れもあったのかもしれない。

だから、私は家に帰る途中…さり気なく彼に声を掛けて、『幼馴染』という立場を最大限に利用して、毎年恒例でしょ?というオーラを纏いながら彼にチョコを渡すんだ。


勿論、本命なのは重々分かっているだろうから、その日だけは、「好き」を封印して…。



けれど、なんとなく…。
それも、疲れてしまっていた。


フラれてしまうのが怖いから、面と向かって自分の気持ちを否定されてしまうのが怖いから、何時も何処かおちゃらけた口調で紡いでいた「好き」という言の葉。
…それでも勇気がいるのは当然のことで。

だからこそ、ずっと軽くはぐらかされて、流されるのは仕方ないことなのかもしれないけれど…。


腐れ縁なんて言葉より、幼馴染と言う方がぴったりと言っても過言ではない、この曖昧な関係は、気の遠くなる程、長い。

まぁ…。
途中、大学進学の為、地方の学校に行っていたから、四年間の空白期間はあるのだけれど。


四年間、私から彼に連絡をした事は一度もない。
何故なら、する理由もないし、…勇気もなかったから…。
そして、連絡が出来ない状態が続き、そうこうする内に、完全にタイミングを逃してしまったのだ。
でも、別に連絡ツールを全て変えた訳でも、彼のことをブロックした訳でもなかったから、向こうから何かしらアクションがあったらいいな、なんて淡い期待をしたことは何度かあった。


どんな人よりも、人の気持ちに敏い人だから…私のこの想いが一時の熱だとは思っていない、はずだったから、余計に…。

でも、そんな期待は四年間…一度も叶うことなく果敢なく散った。


なので、私はそろそろこの想いに終止符を打たねばならないのではないかと、思い始めている。
そう、物心付いた時からずっと温めていた恋心に…。
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