エンドレス・ラプソディ
「そうだ」

 あのときの大人は、服を貸してくれたあのホームレスじゃないか! いったい、何があったんだ?

 俺は居ても立ってもいられなくて、綺麗になった服をたたみ、荷物をまとめてホテルを出た。

 聞いた公園にいくと、テントが設営されていて炊き出しの準備が進められていた。それを遠巻きに眺めている大勢の人たちのなかに、花壇の(へり)に腰掛けている例のホームレスを見つける。

 急き立てられるように高鳴る鼓動を、なんとか抑えながら男に近づいた。

「先ほどは、ありがとうございます」

「お? ホントに来たのか? 別にいいのに」

 俺は、どう切り出したらいいのか迷い、怪訝な表情で見上げている彼を見下ろして意を決した。

「あの、もしかして、橘 誠二さん。ですか?」

「え、なんでおれの名前知ってるの?」

「やっぱり! 俺です。伊藤 雅夫(まさお)です。覚えてらっしゃいませんか?」

「伊藤? 雅夫……。ああ! 不法侵入の泣き虫坊主か?」

「そうです! ──って不法侵入とはひどいなあ」

「いや、あのときはホントに驚いたんだぞ。庭に知らない男の子がいたんだから。ぼうっと突っ立ってるし、あちこち痣(あざ)だらけだしでさ」

「おじさんこそ──あ」

「あはは、懐かしいなあ。そうそう、そう呼ばれてた」

 疲れたように微笑むと、うつろな目をして口を開いた。
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