強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 どうして──どうしてこんなにも調子を狂わされてしまうの?

 人前ではこんなこと、絶対にない。

 教師や級友の前では完璧に振る舞える。

 親戚に嫌味を言われても、笑顔で返せる。

 病室で眠るお父様の前でさえ、泣かずにいられる。

 ──なのに、この人の前だとどうしてこんなに落ち着かないの?


「やっぱり寒い?」


 黙りこくってしまったわたくしに、男の子は心配そうに聞いてきた。

 違う、そうじゃない。


「……少しだけ」


 でも悟られたくなくて、そう答えてしまった。


「やっぱり」


 男の子はそう言うと、自分の身体を支えていた腕を少しずらした。


「もっとこっち」

「え?」

「濡れないようにするから」


 そう言ってわたくしを自分の内側へ寄せた。外に出ようとつかんでいたドアノブからは、人差し指が少しかかるぐらいに離れてしまった。


「……っ!」


 近い……!


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