強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「捕まってください!」

「……わかった」


 男の子が傷だらけの手を伸ばしてくる。

 その手が、わたくしの手に重なりギュッと握られる。


「……は」


 冷たい。

 それでいて力強い。

 でも、触れた瞬間、心臓が跳ねて胸だけが熱くなった。


「手、震えてる」

「……震えていません」

「震えてるよ」

「この気温ですから」


 男の子は不思議そうにわたくしを見る。鋭さはもう微塵もない。


「……変なの」

「お互い様でしょう!」


 思わず言い返すと、男の子が少し笑った。


「……何がおかしいんですの?」

「いや、面白いやつだと思って」

「……!」


 男の子の手を握っていない指先がさまよった。


「お、面白い? 私が?」

「うん」

「余裕ですわね?」


 じとりと睨(ね)めつける。男の子は「やっぱり面白い」と微笑んだ。

 その姿に、また胸が高鳴る。


< 9 / 182 >

この作品をシェア

pagetop