強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「嫌なら、無理に受けなくていいんです」

「え……」


 尚人さんは、真っ直ぐわたくしを見る。

 嘘のない目。


「これは僕たちの両親が決めることじゃない。最終的に決めるのは、瞳さん自身です」

「尚人さん……」

「僕は、瞳さんが嫌がることはしたくありません」


 その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。


「ありがとうございます」

「ただ」


 尚人さんは照れたように笑う。


「僕は、嬉しいです」

「……」

「瞳さんとの婚約なら」


 胸が温かくなるような、こそばゆいような、妙な感覚に襲われる。

 けれど、そのときだった。


「お嬢様」


 背後から声がして、振り返ると藤太が立っていた。

 いつもの執事服で背筋を伸ばし、すました顔をしている。


「客間の準備が整いました」

「……藤太」

「失礼いたします」


 それだけ言って、藤太はわたくしの横を通り過ぎた。


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