強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
目が合わなかった。
胸の奥に、冷たい違和感が残る。
昨夜とはまるで別人で、それがひどく恐ろしかった。
「この部屋も変わっていませんね」
客間に移動してから、尚人さんが懐かしそうに笑った。
「昔は、よく一緒に遊んでいましたよね」
「……懐かしいですわ」
目を伏せて、思い出す。
まだわたくしたちが歩くのさえおぼつかなかった頃。
両家は当然のように家同士の付き合いが深かった。
尚人さんと、大人たちの話なんて気にせず庭を走り回ったり、木に登ろうとして叱られたりしていたことも脳裏に浮かぶ。
池に落ちそうになったわたくしを、尚人さんが引っ張ってくれたこともあった。
「あのとき、瞳さん、すごく泣いてたよね」
「……覚えていませんわ」
「嘘」
「本当です」
「『お父様には言わないで』って、僕にお願いしてきたでしょう」
バチッと火花が散るように記憶が弾けた。