強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「そうでした……」
「懐かしいですね」
尚人さんが笑う。
その笑顔を見ていると、自然とこちらも笑ってしまう。
昔なじみで気心の知れた相手は、やはり落ち着く。
「尚人さんは、昔から変わりませんのね」
「そう?」
「はい、いつも落ち着いていて」
「瞳さんが昔から無茶するから、落ち着いていないと大変だったんですよ」
「わたくし、そんなに無茶していました?」
「木から落ちたり、池に落ちそうになったり」
「……」
「あと、迷子になったこともあった」
「それは……子ども頃の話です」
「僕が見つけたんですよ」
「……そうでしたね」
小さな頃の記憶。
木から落ちて泣いていたわたくしの手を、尚人さんが握ってくれた。
『大丈夫、僕がいるから』
あの言葉を、今でも覚えている。
だからわたくしは、尚人さんを信頼している。
昔から、ずっと。
でも、今その記憶を思い出しても。