強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
9.お嬢様、執事にヤキモキする



 その日、わたくしは朝から落ち着かなかった。

 理由はわかっている。

 昨日、尚人さんから婚約の話を聞いたから。

 叔父様たちに外堀を埋められそうになったから。

 そして──その話を聞いたあと、藤太とまともに話せていないから。

 朝食の席でも、藤太は必要なことしか言わなかった。


「お嬢様、お食事をお持ちしました」

「……ありがとう」

「失礼いたします」


 それだけ。

 いつもの藤太なら、「また少ないじゃん」とか「ちゃんと食べないと倒れるぞ」とか。

 余計なことを一言くらい言ってくるのに。

 今日は、何もない。


「……」


 わたくしは紅茶を一口飲んだ。

 少しだけ渋い。

 いつもの茶葉ではない。

 落ち着かないままのわたくしみたいで。

 ──どうしてわたくしは、こんなにも藤太のことばかり気にしているのだろう。


「瞳さん」


 声をかけられて顔を上げる。


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