強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「尚人さん」


 いつの間にか、向かいの席に尚人さんが座っていた。


「おはよう」

「おはようございます」

「昨日の話、驚かせてしまいましたね」

「いえ……」

「大人たちはああ言っていたけど、まだ返事はしなくていいから」


 尚人さんは微笑む。


「今日はただ、久しぶりに一緒に朝食を食べたかっただけ」

「……ええ、いただきましょう」


 口角を上げると、尚人さんがわたくしのカップを見た。


「あれ?」

「どうかしまして?」

「これ、違う紅茶だね」

「え?」

「瞳さん、昔からアールグレイが好きだったでしょう?」

「……よく覚えていますね」

「覚えてるよ」


 尚人さんが笑った。


「昔、僕が間違えて別の紅茶を持っていったら、すごく悲しそうな顔をしていましたから」

「そ、そんなこと……」

「してたよ」

「……忘れてください」


 頬が熱くなって、うつむいてしまう。


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