強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
美緒も振り返る。
「瞳、いらっしゃい」
「……ええ」
声がうまく出なかった。
「どうかした?」
「園長さんに、用事がありますので」
「でも──」
「失礼いたします」
わたくしは笑った。
上手に笑えていなくても。
「俺、呼んで──」
「先に行きます」
「待って」
「待たせてしまっていますので」
それだけ言って、わたくしは二人から離れた。
みそら園について考えなくてはいけないのに、胸が痛い。
美緒は藤太の幼なじみで、制服の襟を直すくらい当たり前。
そんなこと、わかっているのに。
嫌だった。
あの距離が、自然な触れ方が、自分にはできないことが。
すごく苦しい。
「わたくし……」
藤太と尚人さん。
どちらを見ても、胸が違う音を立てる。
でも美緒が蓮に触れたときのほうが、ずっと嫌だった。
その理由を考えたくなくて、わたくしはうつむいた。