強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 その夜。

 わたくしはベッドの中で、何度も寝返りを打った。

 眠れない。

 それでも目を閉じる。

 無理にでも横になれば、身体は少しでも休まるはず。

 それでも目蓋の裏には。

 紅茶を覚えていてくれた尚人さんの表情が浮かぶ。

 そして。

 不機嫌そうな顔の藤太。

 美緒が藤太の襟を直していた姿。


「……どうして」


 胸に手を当てる。


「藤太と出会ってから、わからないことだらけですわ」


 この前までは、それが苦痛ではなくて。

 むしろ心地良く思っていたのに。

 今は夜も眠れないほど辛い。

 その理由を考えても。

 答えなんて、わからない。

 ただ。

 もし藤太が誰か別の女の子を好きになったら。

 そう考えただけで、涙が出そうになった。


「……嫌」


 小さく呟く。

 自分でも、どうしてそんなことを言ったのかわからなかった。


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