強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 翌朝。

 わたくしたちは顔を合わせた。


「おはようございます、お嬢様」

「……おはようございます」


 いつも通りの挨拶。

 いつも通りの距離。

 なのに、昨日までとは何かが違う。

 目が合う。

 逸らす。

 また合う。

 また逸らす。

 自分の胸の中にあるものを知らないふりをして。

 ただ一つだけ。

 はっきりしたことがあった。

 私はもう、藤太を“ただの執事”として見ることができなくなっていた。

 それでも、やらなくてはいけないことは山ほどある。

 勉強に運動、生徒会活動、お父様のお見舞い。

 自分の気持ちに押しつぶされて、おろそかになる──なんてことは、あってはならない。


「……瞳、最近寝てる?」


 学校での休み時間。

 香織に心配そうな顔で言われて、手鏡で顔を見る。

 隈がうっすらとできていた。


「寝ています」


 わたくしは顔に笑みを貼り付けた。



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