強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
10. お嬢様、執事への恋心を自覚する
あの日から。
わたくしは、自分の気持ちがますますわからなくなっていた。
尚人さんと一緒にいるときは、安心する。
昔から知っている人だから。
久保寺家の娘として、隣に立つことにも何の違和感もない。
けれど、藤太が美緒と話していると、胸がざわつく。
藤太の制服の襟を直していたときなんて、どうしようもなく嫌だった。
そして何より、藤太が私から離れようとすると、胸の奥が息もできないほど苦しくなる。
それが何なのか。
わたくしは本当は、気づき始めていた。
──わたくしは、藤太が好きなのだ。
でも、認めるのが怖かった。
だって、わたくしと藤太の間には、最初から大きな壁がある。
久保寺家のわたくしと、施設で育った藤太。
お嬢様と、使用人。
わたくしたちの間には、簡単には越えられないものがたくさんある。
だから、気づかない振りをしていた。
どうしたって、失恋する可能性が高いから。