強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 心臓が跳ねた。


「藤太が?」

「うん」

「誰を……」

「それ、私に聞く?」


 美緒がいたずらっぽく笑う。


「……」


 わたくしは何も言えなかった。

 美緒はそれ以上追及せずに、遠くで子どもたちと遊ぶ彼を見ながら言う。


「藤太ってさ、自分のこと、あんまり大事にしないんだよね」

「……そうですね」

「ここの子どもたちのためなら、自分が傷つくことなんて平気」

「わたくしも何度も注意しています」

「瞳も?」

「ええ」

「そっか」


 美緒が少し笑う。


「じゃあ、似た者同士だね」

「わたくしと藤太が?」

「うん」

「どこがですの?」

「二人とも、自分より誰かを優先するところ」

「……」


 胸に刺さった。

 わたくしは、何も言えない。


「私ね」


 美緒が静かに話し始めた。


「将来、みそら園で働きたいと思ってる」

「施設職員に?」

「うん」


< 124 / 182 >

この作品をシェア

pagetop