強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「……え?」

「今すぐ全部変える必要なんてないよ」

「……」

「好きだってわかったなら、それだけでも十分じゃない?」


 わたくしは遠くを見る。

 藤太が子どもたちと笑っている。

 その姿を見た瞬間、自然と頬が緩んだ。


「……はい」

「じゃあ、どうしたい?」


 わたくしは少しだけ考えた。


「もう少しだけ……」


 言葉を探す。


「もう少しだけ、そばにいたいです」

「うん」

「今は、それだけでいい」


 それ以上を望んだら。

 きっとこの関係は壊れてしまう。

 だから今は、彼の側にいられるだけでいい。

 執事としてでも、幼なじみでもない。

 ただ藤太の隣にいる人として。


「それでいいと思う」


 美緒が頷いた。


「じゃあ、頑張って」

「……何をですの?」

「逃げないこと」

「……」


 わたくしは苦笑した。

 けれど心の中では、もう決めていた。


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