強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 ──逃げない。

 自分の気持ちから。

 藤太から。

 そして、身分という壁からも。

 すぐに越えられなくても。

 諦めない。

 わたくしはゆっくり立ち上がった。


「ありがとうございます、美緒」

「どういたしまして」

「……藤太には、まだ言わないでくださいね」

「もちろん」

「絶対ですわよ」

「信用ないなぁ」


 わたくしたちは顔を見合わせて笑った。

 そして、わたくしは藤太のいる場所へ歩き出した。

 まだ告白はできない。

 まだ何も変えられない。

 それでもひとつだけ、はっきりしたことがある。

 わたくしはもう、この気持ちを「なかったこと」にはしない。

 たとえわたくしと藤太の間にある身分差が、どれほど大きな壁だったとしても。

 今はただ。

 もう少しだけ。

 彼の側にいたかった。


「藤太!」

「……お嬢様」

「この土地に関するみそら園側の資料ですが──」


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