強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
わたくしは震える声で尋ねた。
「もう伝えたのですか?」
「まだです」
田中が代わりに答えた。
「どうして?」
「職員への説明を先にして、混乱を避ける必要がありますので」
「……」
その言葉に、胸が締めつけられた。
このことを知ったら、藤太はどうするだろう。
そう考えた瞬間、嫌な予感がした。
「話はそれだけではないのよ、瞳さん」
親戚の女性がなだめるように言った。
「あなたと尚人さんの婚約の話を進めなくてはね」
「それは、まだ考えている途中で──」
「あんな将来有望な子の何が不満なの?」
「不満だなんて、そのような」
「なら進めても問題ないわね?」
ああ、本題はこれか。
ちらりとすまし顔の叔父様に視線を送る。
「皆さん、瞳さんもまだ子どもですから」
叔父様はさも私の味方のように振る舞って、応接室から体良く私を追い出した。