強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 藤太から指摘されるとは思わず、固まってしまう。 


「俺は施設育ちで、お前は久保寺家のお嬢様だ」


 胸が痛んだ。


「お前の側にいるなら、もっと相応しい人がいる」

「……誰のことですの?」


 聞きたくないだけだと、わかっている。

 それでも、私は聞いた。


「鈴間さん」


 その名前を聞いた瞬間。

 胸の奥にあった何かが、切れた。


「……尚人さん?」

「うん」

「あなたは」


 声が震える。


「わたくしが、尚人さんを好きだとでも?」

「……そういうわけじゃない」

「では、なぜ勝手に決めるのです!」

「決めてない!」

「決めています!」


 藤太が黙る。


「わたくしが誰を好きなのかも」


 一歩。

 わたくしは彼へ近づいた。


「誰の隣にいたいのかも」


 もう一歩。


「何を大切にしたいのかも」


 そして、藤太の目の前まで来た。


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