強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 ほんの少し近づけば、何かが変わってしまう。

 そんな気がした。

 どうなるのかわからない。

 でも、離れたくない。

 藤太の瞳が揺れる。

 わたくしも目を逸らせない。


「俺、お前のこと──」

「瞳さん」


 その声が。

 突然、背後から響いた。


「……!」


 わたくしと藤太は、同時に振り返った。

 庭小屋の入口に、尚人さんが立っていた。


「……尚人さん」


 どうして、ここに。

 尚人さんは何も言わない。

 ただ、わたくしと藤太を交互に見ている。

 その表情から、いつもの穏やかさが消えていた。


「瞳さん」

「……はい」

「少し話があります」


 静かな声。

 なのに、ひどく冷たく聞こえた。

 わたくしは無意識に、藤太の袖を握る手に力を入れた。

 藤太も、何も言わずにわたくしを見ている。

 さっきまでの温かな空気が、一瞬で消えてしまった。


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