強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 尚人さんの視線が、わたくしの手元へ落ちる。

 藤太の袖をつかんでいるわたくしの手。

 それを見て、尚人さんの瞳がわずかに揺れた。


「……ずいぶんと仲が良いんだね」


 その声に感情はなくて、しとしとと降り続ける雨音に似ていた。

 わたくしは視線を逸らして、袖をつかむ手をゆっくりと離す。


「尚人さん、わたくし、その──」


 尚人さんが手をかざしてわたくしを制した。


「……その前に」


 尚人さんが言った。


「野澤くん」

「はい」

「君にも、聞きたいことがある」


 庭小屋の中に、重い沈黙が落ちる。

 わたくしは初めて、自分の恋がただ自分だけの問題ではなくなったことを知った。

 そして。

 尚人さんが次に口にした言葉が。

 わたくしたちの運命を、大きく変えることになる。


「三人で、僕と瞳さんとの婚約について──話をしよう」


 胸の鼓動が激しくなる。

 藤太の表情が、凍りついた。


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