強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 いけないこと、とはわかっていても、わたくしはドアに聞き耳を立ててしまった。

 手に汗がじっとりとにじむ。


「座って」


 尚人さんの静かな声。


「……はい」


 ソファーが少しきしむ音がする。

 しばらくの間、沈黙が続いた。


「君のことは少し聞いている」

「……そうですか」

「施設で育ったこと」

「はい」

「そこで、瞳さんが施設の問題に関わるようになったことも」


 藤太は黙っていた。


「君が、あの施設を守ろうとしていることも知っている」

「……」

「昨日、辞めようとしたんだってね」


 藤太が身じろぐ気配がした。


「はい」

「どうして?」

「施設のことに集中したかったからです」

「それだけ?」

「……」


 藤太は答えなかった。

 尚人さんは、たたみかけるように質問を続ける。


「瞳さんから離れるためでもある?」


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