強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「……わたくし」


 ……ずっと言えなかったことを、口にするなら今だ。


「お父様の代わりにならなければと思っていました」

「……」

「お父様が倒れて、家のことも、親戚のことも、みそら園のことも……わたくしが全部しっかりしなければって」


 声が震える。


「だから、失敗してはいけないと思っていました」

「瞳」

「でも……」


 涙が一滴、落ちた。


「怖かったんです」


 お父様の目が優しくなる。


「何を選んでも、誰かを傷つけてしまう気がして」

「……」

「家を守ろうとすればみそら園の人たちが傷つく。みそら園を守ろうとすれば、家の人たちと対立する」


 わたくしは唇を噛んだ。


「藤太のことだって……好きになってしまって」

「……そうか」

「でも、それもきっと間違っているんだって……」


 お父様はしばらく黙っていた。

 そして。


「瞳」

「はい」



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