強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 別の親戚がポツリと呟いた。


「もちろんです。これだけの赤字がいきなり回復することはありません」


 想定していた通りの返し。

 わたくしは慌てずに主張を続ける。


「しかし、その大部分は建物の維持費です」


 わたくしは静かに叔父様を見すえた。


「まず一年間、この方法で運営します…… それでも赤字が続くなら、そのときは売却を検討してください」


 場は静まり返っている。

 ──これで、反対されたら。

 嫌な想像が心を侵食して、指先が冷えていく感覚がする。


『もう寝ろよ』


 いつだったか、夜遅くまで資料を読み込んでいた日。

 困ったような、心配そうな藤太の声が聞こえてきた。


『嫌ですわ。まだこの資料を読んでいませんのに』

『明日にしろって』

『あなたこそ、さっきからずっと施設の記録を見ているでしょう』

『俺は慣れてるから』

『私だって慣れます』


< 167 / 182 >

この作品をシェア

pagetop