強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
『……負けず嫌いだな』
『誰のせいですの?』
そう言って笑い合った日が、今は遠い。
だけど。
遠い日の記憶が私の背筋を伸ばした。
「みそら園を守りたいという気持ちだけでは、経営はできません」
わたくしは自分自身にも言い聞かせるように言った。
「だからこそ、わたくしは久保寺家にとっても無理のない形を考えました」
叔父様が資料を見る。
「最終的な目標は、自立運営か」
「その通りです」
叔父様はしばらく黙っていた。
やがて、重々しく口を開いた。
「……随分、考えたな」
「はい」
わたくしはまっすぐ前を見る。
「わたくしが守りたいのは、建物ではありません」
胸の奥に浮かぶのは、子どもたちの笑顔、美緒。
──そして、藤太。
「そこにいる人たちが、帰れる場所です」
誰も何も言わなかった。
わたくしは続けた。
「変えるべきものは変えます」