強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 簡単な話ではないことくらいわかっている。親戚を納得させるだけの利益を提示しなくてはならないのだ。

 お父様は病室にいて、お母様は海外で仕事中だ。

 家や会社は全て親戚たちが動かしている。

 わたくしに決定権はないし、意見を聞かれたりもしない。

 ──それでも。


「少なくとも、何も知らないまま決められるつもりはありません」

「……」

「あなたの話を聞いた以上、わたくしは久保寺家の娘として、施設を守るために全力を尽くします」


 藤太は唇を真一文字に結んだ。

 そして。


「ありがとう」


 ぽつりと声が落とされた。


「ありがとう、瞳」


 ……不思議な感覚。胸の奥がくすぐったい。

 わたくしは、嬉しいの……?

 
「……施設を残せると決まったわけではありません」

「それでも」


 藤太が目を細めた。


「俺は嬉しいよ。一人じゃないってわかったから」


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