強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「……行きましょう。わたくしの部屋で手当てしますから」
藤太の言葉に返事はせず、顔を背けてドアノブを握る。
今度こそ頬が赤いのを指摘されたくなかった。
「ありがとう」
彼の言葉を聞き流すように、古びたドアを開けてわたくしたちは庭小屋を出た。
雨はまだ降っていて、小屋に立てかけた傘を差して隣りの藤太を入れた。
冷たい風が吹き抜ける。顔に雨が当たって鳥肌が立った。
思わず肩を縮める。
「やっぱり寒いじゃん」
そういう藤太も首をすくめている。
「そちらこそ」
「これ着て」
藤太が自分の上着を脱いでしまった。室内までは数分もかからないとはいえ、さっきまでの状況を考えたら絶対に風邪を引く。
「でも、あなたが――」
「俺は平気。女の子が身体冷やしたらダメだ」
有無を言わさず、わたくしの肩に上着をかける。善意を突き返すこともできなくて、そのままわたくしの部屋に向かった。