強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 家族会議が終わったあと。

 廊下で尚人さんに呼び止められた。


「瞳さん、すごかったよ」

「……ありがとうございます」

「昔の瞳さんなら、あんなふうに親戚の前で話せなかったでしょう?」

「そうですね」


 少し笑う。


「わたくしも、そう思います」

「強くなったね」

「……強くなったのでしょうか」


 尚人さんは優しく微笑んだ。


「君はもう、僕が守るだけの女の子じゃないんだね」


 胸に小さな痛みが走った。

 昔なら、その言葉が嬉しかったかもしれない。

 でも今は違う。


「……ええ。もう、自分で選べます」

「そうだね」


 尚人さんは少し寂しそうに笑った。


「それなら、僕も一つ決めないといけないな」

「何を?」

「僕自身の未来を」


 それ以上は言わなかった。

 けれどその横顔を見て、尚人さんもまた自分の人生を選ぼうとしているのだとわかった。

  
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