強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「瞳……」

「わたくし」


 胸が苦しい。

 でも、絶対に逃げない。


「あなたがいると、頑張れるんです」


 涙がにじむ。


「あなたが笑ってくれると嬉しくて、あなたがいなくなると、怖い。だから……」


 わたくしは小さく笑った。


「もう、勝手にいなくならないでくださいね」


 藤太はしばらく何も言わなかった。

 ただ、わたくしを見つめていた。


「……ずるいな。そんなこと言われたら」


 藤太が困ったように笑う。


「もう、離れられないだろ」

「……離れなくていいですわ」


 その瞬間、藤太の顔が赤くなる。

 わたくしも、きっと同じくらい赤い。

 けれど、もう恥ずかしくなかった。

 家のためでも、誰かの期待のためでもない。

 わたくしが守りたいものを、わたくしが大切にしたい人を、自分の意志で選ぶ。

 そしてその選択の先に、藤太がいてくれる。

 それだけで今のわたくしは、十分に幸せだった。


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