強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
15. お嬢様、執事ともう一度約束する



 その夜は、不思議なくらい静かだった。

 窓を開けると、夜風がカーテンを揺らす。

 空には、まん丸の月。

 淡い月明かりが、久保寺家の庭を照らしていた。

 わたくしはしばらく、その月を見つめていた。


「……藤太」


 小さく呟いた。

 ……眠れない。

 今日は色々あり過ぎて、目が冴えてしまっている。

 会議での提案に、庭小屋での藤太とのやり取り。

 昔のわたくしとは、何もかも違う。

 あの夜のわたくしは、血まみれになった知らない少年を助けただけだった。

 今は、彼がどれほど大切なのかを知っている。

 自分が、彼をどう思っているのかも。

 もう、わかっている。

 だから、次はちゃんと伝えたい。

 わたくしは庭へ出た。

 夜風が頬をなでる。

 少し寒い。

 でも、不思議と足取りは軽かった。

 ベンチの近くまで行くと、すでに人影があった。


「寝れないの?」

「藤太」


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