強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 彼が振り返る。

 いつもの執事服。

 でも、今夜は少しだけ違って見えた。

 わたくしが知っている、あの少年の顔。

 優しくて、少しぶっきらぼうで。

 わたくしのことを誰よりも心配してくれる、大切な人。


「俺、何だか落ち着かなくて」

「わたくしも、少し夜風に当たりたくて」

「色々あったもんな」

「まだ興奮しているのかも」


 藤太がベンチを指差した。


「とりあえず座ろう?」

「ええ」


 わたくしは首を縦に振った。

 あの日の夜のように、並んで座る。

 藤太がとろけそうな視線をわたくしに向けた。


「瞳」

「……っ!」


 呼吸が止まった。

 ただ名前を呼ばれただけなのに、顔が熱くなる。


「な、何ですの?」

「いや、名前呼んだだけだけど」

「わかっています!」

「顔、赤いぞ」

「月が明るいからですわ!」

「絶対違うだろ」

「お黙りなさい」


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