強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「……泣くなよ」
「泣いてなどいませんわ」
「泣いてる」
「これは……」
わたくしは慌てて涙をぬぐった。
「嬉しいだけです」
藤太が少し困ったように笑った。
「……俺も嬉しい」
そして、ゆっくりと彼が手に力を入れた。
お互いの体温が混じる。
指先が重なる。
わたくしは、逃げなかった。
その温もりが、胸の奥まで届いた気がした。
ふと思い出す。
あの月夜の庭。
あのときは、藤太が自分の上着を私にかけてくれた。
あの優しさに、わたくしは胸が苦しくなった。
でも、あの頃はまだこの気持ちが何なのかわからなかった。
今はわかる。
わたくしは、この人が好きで一緒にいたい。
「……藤太」
「ん?」
「これからも」
握られた手を見つめる。
「側にいてくれますか?」
藤太は少しも迷わなかった。
「もちろん」