強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
2.お嬢様、男の子を手当てする



 夜、自分の部屋に初対面の男の子を連れ込む。

 普通に考えれば、卒倒してしまうような話だ。

 ましてわたくしは久保寺家の娘。

 使用人に見つかれば、どんな騒ぎになることか。


「ゆっくり歩いてください」


 わたくしたちは裏口からそっと忍び込んで、人目につかない経路で自分の部屋に滑り込んだ。

 ……幼少期はこうして、使用人たちの目を盗んで外で遊んでいた。それがここで役に立つとは。


「……ふう」


 扉をそっと閉める。鍵をかける音がやけに大きく響いた。

 藤太が部屋を見回して、ため息とも感嘆ともつかない声を漏らす。


「広……」

「どうかしましたか?」

「いや」


 藤太は慌てて視線を明後日の方向に向けた。


「……なんでもない」


 私の部屋は、いわゆる“普通の中学生の部屋”よりよっぽど広い。

 大きな格子窓。

 淡いブルーのカーテン。

 全身が映る鏡。



< 19 / 182 >

この作品をシェア

pagetop