強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 水たまりに映った自分の顔を見る。

 黒髪ロングのゆるいウェーブに縁取られた顔は白く、切れ長で青灰色の瞳がやけに目立っていた。

 ……誰が見ても疲れた顔だ。

 今日は少しだけ疲れていた。

 というより、ここ最近ずっと疲れている。


「……お父様」


 病院で眠り続けるお父様を呼ぶ。

 胸の奥がきゅっと痛んで、傘を持つ手に力がこもった。

 お父様が倒れてから、もう何日も経っている。

 医師や看護師は慎重な言葉を選ぶばかりで、明確なことを言ってくれない。

 ……わかっている。適当なことを言って安心させるよりはマシなのだと。

 だからわたくしは、家でも学校でも笑っている。

 笑うことにした。

 親戚の前でも、使用人の前でも、級友や教師たちの前でも。


『大丈夫ですわ』

『お父様なら、きっと回復なさいます』


 そう微笑んで、何でもない顔をする。


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