強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
 


 久保寺家の娘なのだから、お父様が倒れたくらいで取り乱してはいけない。

 わたくしまで弱くなったら、お母様がいない今誰がこの家を支えるの。


「……大丈夫」


 誰もいない庭で、わたくしは小さくこぼした。


「わたくしは、大丈夫ですわ」


 言葉にして自分に言い聞かせれば、本当に大丈夫になれると思った。

 ──その瞬間。


 ガタンッ!


「……っ!」


 肩が跳ねて、心臓が嫌なほど大きく脈打った。


「……何?」


 振り返っても、庭には誰もいない。静かな雨音だけだ。

 雨に濡れた葉が、ライトに照らされて風に揺れているだけ。


「……」


 気のせい?

 弱気になってしまったから、わたくしったら幻聴を……。

 そう思ったとき。


 ──ガタッ。


 また聞こえた。今度は、はっきりと。

 庭の奥にある、古くて黒ずんだ庭小屋。

 ほとんど使われていない場所。


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