強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 手の甲に、指の関節、額やこめかみ、頬や唇の端。


「……大人が寄ってたかって……」


 思わず呟いた。もしわたくしが行儀の悪い子なら、舌打ちの一つもしてしまいそうだ。


「そんなにひどい?」

「……自分でわかるでしょう」


 ガーゼに消毒液を染み込ませ、そうっと傷口に当てる。


「……」


 藤太は無表情のまま、肩をわずかに跳ねさせた。


「痛みますか?」

「なんともない」

「そうは見えませんが?」

「本当に大したこと──」

「痛いなら言ってくださってかまいません」

「……すっげぇ痛む」

「でしょうね」

「言ったら悲しそうな顔するだろ」


 藤太は傷だらけの顔に穏やかな微笑みを浮かべた。

 わたくしはそれを見ない振りして、傷口を丁寧に押さえていく。

 室内に入るまで雨に濡れてしまったのか、髪もまだ少し湿って光を帯びていた。

「髪も乾かしましょう」



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