強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「……この格好、息苦しいな」
数日後、準備をしてわたくしの前に現れた藤太を見て、思わず言葉を失った。
黒い燕尾服。
染み一つない白いシャツ。
きちんと結ばれたネクタイは一ミリの隙もない。
無造作に跳ねているダークブラウンの髪は、後ろに撫で付けられてカッチリ固まっている。
どこに出しても恥ずかしくない執事の姿だった。
「どう?」
「……」
「なんか言って。無表情で黙ってられると一番怖い」
「……悪くはありませんわ」
気恥ずかしくて憎まれ口を叩いてしまった。ツンと横まで向いてしまっては印象最悪だろう。
案の定、藤太は眉尻を下げてしまった。
「褒めてる?」
「……褒めています。少なくとも背筋は伸びていますから、佇まいは合格です」
「佇まいで合格? 基準甘くない?」
「何を言ってるんです。今日が初日なのですよ? 最初から完璧など求めません」