強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「……この格好、息苦しいな」


 数日後、準備をしてわたくしの前に現れた藤太を見て、思わず言葉を失った。

 黒い燕尾服。

 染み一つない白いシャツ。

 きちんと結ばれたネクタイは一ミリの隙もない。

 無造作に跳ねているダークブラウンの髪は、後ろに撫で付けられてカッチリ固まっている。

 どこに出しても恥ずかしくない執事の姿だった。


「どう?」

「……」

「なんか言って。無表情で黙ってられると一番怖い」

「……悪くはありませんわ」


 気恥ずかしくて憎まれ口を叩いてしまった。ツンと横まで向いてしまっては印象最悪だろう。

 案の定、藤太は眉尻を下げてしまった。


「褒めてる?」

「……褒めています。少なくとも背筋は伸びていますから、佇まいは合格です」

「佇まいで合格? 基準甘くない?」

「何を言ってるんです。今日が初日なのですよ? 最初から完璧など求めません」



< 37 / 182 >

この作品をシェア

pagetop