強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「……照れてる?」
「そんな訳ありませんわ」
「耳、赤い」
「!」
わたくしは慌てて髪で耳を隠した。
藤太が涼やかな声で笑う。
「やっぱり照れてる」
「……あなた」
彼の朗らかな笑顔をジトッと睨む。
「初日から主人をからかうなんて、いい度胸ですわね?」
「そうだな。そういう契約だった」
藤太は少し考えてから、姿勢を正して胸に手を当てた。
「では、お嬢様」
声は低く、落ち着いたものに変わる。
「本日のご予定をお伺いいたします」
本物の執事のようで、田中の教育が行き届いているのがよくわかった。
さっきまでわたくしをからかっていた藤太と本当に同一人物なのか、疑ってしまうほど。
「……午後から、お父様のお見舞いに。それからみそら園の経営資料を確認します」
「承知しました」
「夜には家庭教師の──」
「お嬢様、昼食は?」