強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 それから数日、蓮はスポンジのように仕事を吸収していった。

 初日までに最低限の振る舞いを田中が教えていたが、執事の仕事はそれだけではない。

 何かあればさりげなくフォローしようと構えていたのが、肩透かしになってしまった。

 藤太はもともと施設で年下の子たちの面倒を見ているから、人の顔色を見るのが上手い。先を読んで行動できるタイプというべきか。

 使用人たちにもすぐに馴染んだ。


「藤太くん、こっちをお願いできる?」

「はい」

「お嬢様のお茶を用意したわ」

「ありがとうございます」


 完璧だった──わたくし以外の前では。


「お嬢様、お茶をお持ちしました」

「ええ、ありがとう」

「失礼いたします」


 言葉遣いは丁寧で、所作も美しく、背筋も伸びている。

 わたくしの知っている藤太とは、まるで違う。有能な執事然とした態度。

 ……これが二人きりになると。

「瞳」



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