強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「思ってるよ」
「嘘。二人きりになると、全然そう扱わないでしょう」
「だってそりゃあ」
藤太が優しい目をして笑った。
「二人きりなら、瞳だし」
「……」
ただの“瞳”──その言葉に、胸が甘く鳴る。
「お嬢様じゃなくて……ただの瞳?」
「そう、ただの瞳」
人は二足歩行するとか、今日の天気は晴れとか、当たり前みたいに言われて、どうしていいかわからなくなる。
藤太はそんな私に気づかず、資料へ視線を戻した。
「経営計画に歴代の予算案……園長先生たち、こんな面倒なことをずっと考えてたんだな」
「そう、ですね」
「これを……グラフにしようとしてるの?」
「はい。久保寺家からの資金提供との相関図をわかりやすい形にまとめようと思って」
「それで疲れた顔してたのか」
「疲れた顔だなんて──」
「じゃあ、今日はもう終わりにしよう」
「嫌です」