強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「瞳」

「……こうしている間にも土地が」

「疲れたままだと効率悪くなるぞ」

「……執事のくせに、口が減りませんね」

「お嬢様のくせに体調管理もできないんですか」


 わかってる。

 藤太が正しいことくらい。

 これがお父様やお母様だったら、もっと上手くやるのだろう。

 それが悔しい。

 でも、誰かに真正面から心配されるのは久しぶりだった。

 そのせいかもしれない。


「……わかりました。休憩します」

「そうと決まれば片付けますね」


 藤太は満足そうに笑って、資料の山を整え始めた。

 わたくしは窓の外へ視線を向ける。

 夕暮れの庭には穏やかな日差しが降り注ぐ。

 この庭で、あの日の夜、雨の中で倒れていた藤太。

 あのときは、ただ助けたいとしか思っていなかった。

 なのに今は、藤太がこの屋敷にいることが、当たり前になりつつある。

 それがひどく心地良かった。


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