強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
執事服に身を包み、わたくしに仕えて。
他の人の前では、
「お嬢様」
こうして二人きりになれば、
「瞳」
そう呼ばれる。
その違いが、少しだけこそばゆくて、特別な関係だと勘違いしそうになる。
「明日も学校……確か生徒会の仕事もあるんだろ? 今日は早めに寝とけよ」
「学校はあなたもでしょう?」
「俺はいいんだよ」
「……あなたも強情ですね」
わたくしがため息混じりに呟くと、藤太は肩をすくめた。
「お互い様だな」
「同志なのですから、気をつけ合いましょう」
「ああ。明日は日直だから、俺も早く寝るよ」
窓の外には西日が差して、夜の気配が静かに近づいている。
わたくしはまだ知らなかった。
みそら園を救うために行動する同志。お嬢様と執事。
この関係だけで満足できなくなることを。
ただこの頃のわたくしは、藤太が「瞳」と呼ぶ声が、少しだけ好きだと自覚していた。