強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 ……絶対に口には出せないけど。

 それでも玄関のほうから物音がすると、反射的に振り返ってしまう。


「戻りました」


 両手に買い物袋を持つ藤太がそこにいた。


「遅かったですわね」


 背筋を伸ばし、ゆっくりと藤太に近づいた。


「……その、待っていたわけではないのですけど」

「うん」


 藤太はキョトンとした顔でわたくしの言葉を待っている。

 ……八つ当たりだとわかっていても、腹が立つ。

 ここで「待ってたの?」とか聞いてくれたっていいでしょうに。


「……鈍い人」

「え?」

「知りません!」


 わたくしは踵を返し、自室へ戻ろうとした。気分を落ち着かせなくては。

 そうしたいのに、背中に藤太の声が飛んできた。


「瞳、顔が赤い。熱?」

「違います!」


 わたくしは早足で廊下を進む。後ろから藤太が首を傾げて見ている気配がした。

 本当に、どうしてこうも鈍いのかしら。


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